細胞膜を構成している脂質は均質ではなく、脂質ラフトなどの膜微小領域がモザイク状に混在しており、それが膜タンパク質の局在や細胞の形態・機能を制御していることが明らかになってきた。本研の目的は脂質ラフトの超微形態学的局在および細胞内動態を脂質特異的なプローブを用いて明らかにすることであり、平成15年度には以下の成果が得られた。 1.脂質プローブの結合性の検討:ヒト培養細胞(F592細胞およびJurkat細胞)に蛍光標識PEG-コレステロールあるいはVenus標識ライセニンおよび脂質ラフトのタンパク質マーカーを結合させ、固定・染色後に共焦点レーザー顕微鏡で観察した。その結果、蛍光標識PEG-Cholは脂質ラフトマーカーと共局在していることが明らかになった。また、Venus標識ライセニンは4℃では細胞面に均質に分布していたが、コレラトキシンのとの共局在は認められなかった。2.脂質ラフトの細胞内取り込みの検討:F592細胞にVenus標識ライセニンを結合させ37℃に加温し、経時的に固定し型通りエポン包埋し電顕で観察した。ライセニンは4℃では細胞表面に存在していたが、37℃で5分以内の加温では細胞内には取り込まれなかった。しかし、30分以上加温した細胞では細胞内に取り込まれ、エンドソーム内に存在していた。3.脂質ラフト構成脂質の局在の検討:F592細胞にVenus標識ライセニンを4℃で結合させ、試料を凍結した。新規購入した凍結試料用ダイヤモンドナイフを用いて凍結超薄切試料を作製し、イムノゴールド法でライセニンの局在を検討した。その結果、ラベルは細胞表面に均等に分布していた。 これらの結果より、脂質特異的プローブの細胞結合性が明らかになったが、細胞内取り込み過程は今後の課題であり、来年度は、これらの詳細な局在を種々の凍結技法を用いて検討する予定である。
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