本研究課題の助成期間内に以下の成果が得られた。1.脂質プローブの結合性の検討:培養細胞に蛍光標識PEG-コレステロール(fPEG-Chol)あるいはライセニンを結合させた結果、fPEG-Cholは脂質ラフトマーカーと共局在していたが、ライセニンは共局在していなかった。2.PEF-Cholの赤血球膜上での分布:未固定の赤血球にPEG-Cholを加えると有棘化した。PEG-Cholの有棘赤血球膜上の分布を急速凍結・ディープエッチンク法を用いて検討した。その結果、PEG-コレステロールは細胞突起部に凝集しており、それにより細胞膜の突出が誘発されたことが示唆された。3.脂質ラフトの細胞内取り込みの検討:F592細胞にライセニンを結合させ、電顕観察した。ライセニンは37℃で5分以内の加温では細胞内には取り込まれなかった。しかし、30分以上加温した細胞ではエンドソーム内に取り込まれていた。4.スフィンゴミエリンの細胞表面での二次元分布の検討:Jurkat細胞表面のスフィンゴミエリンとガングリオシドGM1をそれぞれライセニンとコレラトキシンで標識し、細胞膜断片を剥離回収して電顕観察した。その結果、両者ともにドメインを形成していたが、互いの分布には関連性が認められなかった。このことはRipley's K-function testを用いた形態解析により確認された。構成脂質の分布に差があることより、ラフトにも多様性が存在することが示唆された。5.スフィンゴミエリンの細胞内動態の検討:コロイド金直接標識ライセニンを用いることで凝集の少ない状態でのスフィンゴミエリンの動態を検討した。その結果、プローブの凝集にかかわらず細胞内取り込み像は認められなかった。
|