リソソーム酵素の選別輸送はマンノース6リン酸受容体(MPR)によって行われ、同受容体の細胞内輸送はクラスリンアダプター分子であるGGA1、2、3、およびAP1によって制御されている。本研究はこれら分子の詳細な機能について解析するものであり、今までに以下の点が明らかとなっている。 1.GGA3には、MPRと結合できないスプライシング変異体(アミノ酸68-101が欠失)が存在する。GGAsを認識する抗体の作製、確認作業の過程で、このスプライシング変異体と全長GGA3の発現レベルを、ヒト組織において解析した。脳組織では2つの分子が確認されたが、その他の組織あるいはヒト由来の培養細胞では変異体が優位に発現していることを見出した。このことは、GGA3がMPR輸送以外の機能に関わっていることを示唆する(BBRCに発表)。 2.CFP-GGA1とVenus-AP1をHeLa細胞に発現させ、生細胞における2色同時観察を行った。その結果、(1)両分子がゴルジ体領域で異なる局在を示すこと、(2)この部位から出る点状構造のほとんどがVenus-AP1のみを含むこと、が分かった。このことは両分子が細胞内で異なる機能を有し、小胞発芽後の過程には主にAP1が関与することを示唆する。 3.GGAs分子のトランスゴルジネットワーク膜への結合解離の速度をFRAP法により比較した。その結果、(1)GGA1のヒンジ/イアー領域の存在によって同分子の結合解離速度が遅延すること、(2)GGA3のスプライシング変異体は全長GGA3より結合解離速度が遅延していること、が分かった。従って、FRAP法はこのような分子領域の機能を探る有用な手法であることが示された。 今後、上記2および3について、論文発表のための追加実験を行う予定である。
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