研究概要 |
リソソーム酵素の選別輸送はマンノース6リン酸受容体(MPR)によって行われ、同受容体の細胞内輸送はクラスリンアダプタータンパク質であるGGA1,2,3、およびAP1によって制御されている。本研究はこれら分子の詳細な動態・機能を解析するものであり、今年度の研究により以下の成果が得られた。 1.コレステロール輸送を乱す薬物として知られるU18666AをHeLa細胞に投与すると、MPRが今まで知られていない特異なエンドソームに蓄積することを見いだした。このことはコレステロールの機能がMPR輸送に関与することを示す(Cell and Tissue Researchに発表)。 2.全長のカチオン依存性MPRを緑色蛍光タンパク質(GFP)に融合させたタンパク質(GFP-CIMPR-full)を構築し、生細胞において観察すると、多形性の小管小胞状構造物としてトランスゴルジネットワークから出芽していた。この動態は細胞質外ドメインを欠いたGFP融合タンパク質(GFP-CIMPR-tail)と同様であるが、両者は細胞末梢領域で異なる局在を示した。FRAP (fluorescence recovery after photobleaching)法を用いて、これら分子の細胞内輸送動態を解析した結果、GFP-CIMPR-fullは末梢における停留時間がGFP-CIMPR-tailより長かった。さらに、GFP-CIMPR-tailは(1)で述べた異常エンドソームへの局在が見られなかった。以上より、MPRの末梢領域における局在・動態には細胞質外ドメインが関わることが分かった。 3.GGAの動態・機能を解析する研究ツールとして、GFP-GGA1を安定に発現するHeLa細胞を作製した。また、RNAi法を用い、GGA1,GGA2,GGA3のそれぞれのタンパク発現レベルを安定に低下させた細胞株を樹立した。
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