研究概要 |
ラットおよびヒトの骨髄間質細胞から以下の選択的な分化転換系を開発した。 -神経細胞誘導(J.Clin.Invest.,2004)- ヒトおよびラットの骨髄間質細胞にNotch遺伝子を導入することによって神経幹細胞様に分化転換し、マーカーを発現することを見いだした。それらの細胞にサイトカイン刺激を与えると96%の細胞がpost-mitotic neuronになり、活動電位を記録することが出来た。この最終産物にはグリア細胞が一切含まれておらず、神経細胞だけで最終産物が構成されている。これらの神経細胞にさらにGDNFを投与するとドーパミン作動性ニューロンが40%近くに増加し、これらの細胞をパーキンソンモデルラットの線状体に移植したところ、apomorphin誘導の異常回転運動の顕著な症状改善を認めた。移植後の脳内でのドーパミン産生もHPLCで確認している。誘導メカニズムとしてNotch蛋白の部分欠損変異(deletion mutant)を導入し調べた。その結果ankyrin repeatsドメインにJAK-STAT系抑制効果があり、STATの抑制を介して神経誘導が行われていることが分かった。 -骨格筋細胞(Science in minor revision)- 神経誘導とは逆にサイトカイン刺激を行った後にNotchを導入するとPax7陽性のsatellite cellが、さらに引き続き筋芽細胞が選択的に誘導される。上記の細胞に分化誘導をかけることによって筋芽細胞の融合が促進され、自発的な収縮能を持つ多核の骨格筋細胞が得られる。必ず、一部に幹細胞と考えられているsatellite cellが残り、分裂と分化誘導を繰り返すことができる。最終産物では骨格筋のマーカーであるMyoD,myogenin,MRF4、筋収縮蛋白などの発現が確認されている。筋管細胞をcardiotoxinで障害したratおよび筋ジストロフィーのモデルマウスであるmdx-nude mouseの前脛骨筋に移植すると、生着しdystrophinの発現を認めた。 -Schwann細胞(Eur.J.Neurosci,2001)- 還元剤であるbeta-mercaptoethanolを投与し、その後分化誘導剤であるレチノイン酸と成長因子を与えるとSchwann細胞が誘導される。これらのSchwann細胞を末梢神経および中枢神経の損傷系に移植すると神経線維の再伸長を認め、また跳躍伝導の回復を認めた。ミエリンの再形成も確認された。
|