既に研究計画書で述べた様に本研究の遂行に当たり、総数で400?500個のアカウミガメの卵を必要とする。アカウミガメは保護野生生物種であり、その採取には採補地の県知事の許可を必要とし、また、1年間の許可数は約100個(1腹)と限られている。以上の理由から、研究に必要とする標本の発生段階を4期に分け、4年間で一連の発生標本を揃える事とした。15年度は鹿児島県知事の許可を受けて、屋久島いなか浜にて保護団体の指導の下に、99個のウミガメ卵を得た。 直ちに(産卵後24時間以後は移動不可)に空輸して岩手医科大学内に設置した恒温器内で飼育を開始した。血管内色素注入標本と樹脂鋳型標本作製のため、心臓鼓動開始期から連日約10個の卵を使用して10日に渡って標本作製を試みた(総数99個)。 結果:段階ごとに血管内色素注入標本と樹脂鋳型標本(総数47個)を得、所定の処置後標本として保存し、光学解剖顕微鏡と走査型電子顕微鏡による観察を行った。 しかし、恒温器で飼育した総数99個の卵の約5割強が循環開始以前に発生を停止し死卵となっていたため研究に使えず、予定の標本数に達しなかった。これまでのデータによれば24時間以内の移動後の生存率は7?8割とされており、屋久島から岩手の遠距離輸送が何らかの影響を与えたと考えられる。これは本研究遂行に当たって大きな問題である。必要な標本の総数を得るためには16年度以降、飼育卵の生存率を7?8割まで上げる必要があり、採取、輸送、飼育方法に改良を加え飼育卵の生存率を上げねばならない。
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