我々は脊椎動物の初期胚に適用可能な樹脂鋳型法を開発し、東北サンショウウオやラットを材料として後腎動静脈と腎臓器内血管の発生過程の解析を進めて来た。その結果、後腎動脈の起源は中腎の遣残動脈ではないこと、後腎動脈と下大静脈そして後腎臓器内の初期血管路の形態形成に、副腎原基(中腎ではなく)が重要な意義を持つことを明らかにした。本研究では原始爬虫類であるアカウミガメの初期胚に上記樹脂鋳型法を適用して、中腎から後腎への移行に伴う臓器内の微細血管の形態変化を三次元的に解析する。この過程で、ラットで明らかとなった後腎血管系の発生に果たす副腎原基の役割を系統発生学的に解明する。 本研究の遂行にあたり約500個のアカウミガメの卵を必要とするが、アカウミガメが保護野生生物種であることからその採取には採補地の県知事の許可を必要とし、年間の許可総数は一腹(約100個)に限られている。以上の理由から、研究に必要とする標本の発生段階を4期に分け、4年間で一連の発生標本を揃えることとした。鹿児島県屋久島田舎浜にて保護団体の指導の下に15年度は99個の卵を得て標本を作製したが、約5割強の卵が輸送中に死卵となって研究に使えなかった。16と17年度はこの不足分を補うため特別の採補許可を取り2腹(総数227個)の卵を得た。16年度までの不足分と17年度の予定標本にっいて段階毎に血管内色素注入標本と樹脂鋳型注入標本作製した。17年度までに作成した全標本について精査した結果、若干数の不足を認めた。18年度は予定標本数を確保するとともに上記不足分を補うため再度の特別採補許可を得て必要な標本の作成とその観察を継続して行ない、本研究の遂行に必要なウミガメ卵を得て、標本の作成を完了した。 本研究は上記理由により、研究の完遂に必要な標本数の確保と制作に科学研究補助金給付期間を費やし、期間中に研究成果の発表に至っていない。研究成果のまとめと発表ついては現在進行中である(19年度、20年度発表予定)。
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