我々は脊椎動物の初期胚に適用可能な樹脂鋳型法を開発し、東北サンショウウオやラットを材料として前、中、後腎動静脈と腎臓器内血管の発生過程の解析を進めて来た。その結果、後腎動脈の起源は中基(中腎ではなく)が重要な意義を持つことを明らかにした。本研究では原始爬虫類であるアカウミガメの初期胚に上記樹脂鋳型法を適用して、中腎から後腎への移行に伴う臓器内の微細血管の形態変化を三次元的に解析する。この過程で、ラットで明らかとなった後腎血管系の発生に果たす副腎原基の役割を系統発生学的に解明する。 本研究の遂行にあたり500個以上のアカウミガメの卵を必要とした。アカウミガメが保護野生生物種であることからその採取には採補地である屋久島町の許可を必要とし、年間の許可総数は一腹(約100-120個)とした。以上の理由から、研究に必要とする標本の発生段階を4期に分け、4年間で一連の発生標本を揃えることとした。鹿児島県屋久島田舎浜にて保護団体の指導の下に平成13年度と14年度に産卵観察と予備調査を行い、採卵法、輸送法、飼育法を検討した。15年度は99個の卵を得て標本を作製したが、約5割強の卵が輸送中に死卵となって研究に使えなかった。この不足分を補うため16、17、18年度は年間2腹(総数200個)の採補許可を得た。実際の採卵数は16年度233個、17年度281、18年度209個であった。17年度には、17年度の予定標本について段階毎に血管内色素注入標本と樹脂鋳型注入標本作製するとともに、16年度までの不足分の血管内色素注入標本と樹脂鋳型注入標本作製した。17年度までに作成した全標本について精査した結果、若干数の不足を認めたため、18年度は予定標本数を確保するとともに上記不足分を補うため必要な標本の作成とその観察を継続して行ない、本研究の遂行に必要なウミガメ卵を得て、標本の作成を完了した。
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