研究概要 |
Notchシグナル伝達系は細胞間相互作用の重要な構成要素の一つで、多くの組織や器官形成に重要な役割を果たすことが示され、心臓血管形成においてもNotch1,2,4,Delta4やJag1などの関与が示唆されてきた。我々は、Notchシグナル伝達系の標的遺伝子であり転写因子であるHairy and Enhancer of splitに注目して新たな遺伝子群をクローニングし、Hairy and E(spl)-related(hesr)1,2,3と命名した。この遺伝子群の機能を解析するため、全てのノックアウトマウスを作出したが、hesr1及び3のノックアウトホモマウスは生存、生殖可能で、発生過程における異常は認められなかった。これに対してhesr2ノックアウトホモマウスは、その多くが生後2〜10日の間に、体重の増加をほとんど伴わずに死亡した。生体内での心機能を判定するため超音波診断装置(HITACHI/PMS HDI-5000 Sono CT SRES・PMS CL15-7 high frequency linear probe)を用いて解析した。M-モードでは、fractional shorteningの著しい低下が認められた。カラーおよびパルスドップラーで観察すると、三尖弁および僧帽弁の逆流と、VSDを経由した右心室から左心室への血流が確認された。解剖の結果、その心臓が著しく拡大し、三尖弁および僧帽弁の形成が不全で、心室中隔欠損及び心房中隔2次孔欠損がみられた。これらの結果よりhesr2遺伝子が、心臓形成に重要な役割を果たすことが示唆された。
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