研究概要 |
食べ物や水などの摂取により化学的刺激、機械的刺激が与えられると、消化管の吸収上皮細胞やエンテロクロマフィン細胞からセロトニンやATPが放出され、知覚神経終末に作用して反射が誘起されると、従来考えられてきた。筆者はラットの12指腸から絨毛上皮線維芽細胞を初代培養し、この細胞がタッチやストレッチといった機械刺激に反応してATPを放出しCa^<2+>波を伝播すること、そしてそのシグナルが神経細胞へも伝播することを明らかにした。すなわち、上皮下線維芽細胞は消化管絨毛における「メカノセンサー」として働いていることが示唆された。絨毛上皮下線維芽細胞は神経細胞だけではなく絨毛の上皮細胞とも相互作用し、栄養分などの吸収を制御することによって絨毛での「バリヤーあるいはフルイ」としては働いている可能性が考えられた。15,16年度はそれを明らかにするために、ヒト結腸癌由来の上皮細胞であるT84細胞と絨毛上皮下線維芽細胞とのco-culture系を確立した。T84上皮細胞はco-cultureによって上皮細胞の分化がみられ(図1)、上皮下線維芽細胞から放出された液性因子によって上皮細胞が制御を受けていることが示唆された。また、絨毛上皮下線維芽細胞に機械的刺激を与えCa^<2+>波を起こすとそのCa^<2+>波はT84細胞にも伝播することが明らかとなった(図2)。このことは機械刺激によって放出されたATPがパラクライン的に上皮細胞に作用しその機能を制御していることを強く示唆する。
|