過分極で活性化される陽イオンチャネルには今までHCN1〜4の4種類のサブタイプがクローン化されている。そのうちの一つであるHCN4は、申請者がクローン化し、心臓や視床おいて周期的発火に重要な役割を果たしていることが示唆されている。生体内、特に心臓の洞房結節および視床の神経細胞における役割を解明するため、HCN4の発現量をテトラサイクリンの誘導体を投与することによって調節することが出来る遺伝子改変マウスを作製する目的で実験を行った。昨年度までに、HCN4の5'非翻訳領域に大腸菌テトラサイクリン耐性オペロンの転写調節に働くタンパク質とオペレーター配列を利用したいわゆるTet-Offシステムを相同組換えで挿入し、HCN4の本来のプロモーターでTetリプレッサータンパクがつくられ、そのタンパクがHCN4の開始コドンのすぐ上流に挿入されたTetオペレーター配列に結合しHCN4が発現するマウスを作製した。今年度は、C57/BL6マウスと戻し交配を行ったが、そのマウスからはホモマウスを得ることが出来なかった。そのため、昨年度F1マウスを用いて作製したホモマウスを用いて実験を行った。3週間テトラサイクリン誘導体をマウス個体に投与し、テトラサクリ誘導体を投与していないマウスとHCN4の発現量をウェスタンブロッティングを用いて比較したところ、心臓においては1/10程度、中枢神経系においても数分の1程度に発現量が抑制されていることが確認できた。心電図では明らかな違いは確認できなかったが、今後、電気生理的手法を用いて細胞レベルで機能の変化がないか確認する予定である。また、Tetオペレーター配列でGFPを発現するマウスと交配し、HCN4を発現している細胞にGFPを発現するようになるマウスの作製に成功した。そのマウスでは、今までHCN4の発現が知られていた脳、心臓、腸管、味蕾、網膜以外に嗅細胞にもGFPの発現を認め、HCN4の抗体を使いGFPだけでなく実際にHCN4の発現を確認することが出来た。今後、今まで知られていなかった嗅細胞でのHCN4の役割を調べる予定である。
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