中枢呼吸化学受容機構、中枢性呼吸調節機構について、以下の研究を行った。 1.中枢神経系で重要な役割を持つ神経伝達物資GABAにつき、中枢性呼吸調節における意義を明らかにするため、その合成酵素GADの遺伝子改変マウスを用いた解析を行い、GABAは安定した呼吸出力の維持に重要な役割を果たしていることを明らかにした(Kuwana et al. 2003;2004;2006)。また、麻酔臨床で広く用いられているが呼吸抑制が問題である静脈麻酔薬propofolにつき、その呼吸抑制はGABA様作用を介して発現することを明らかにした(Kashiwagi et al. 2004;2004)。 2.in vitro脳幹標本において膜電位イメージングによるマッピング解析を行い、従来考えられていた以外に橋A5領域が内因性化学感受性を有することを明らかにした(Ito et al. 2004)。 3.中枢呼吸化学受容機構においては、ニコチン性アセチルコリン受容体が重要であるとの仮説を立て、ニコチン性アセチルコリン受容体遮断薬であり、麻酔臨床で広く用いられている非脱分極性筋弛緩剤につき、in vitro脳幹標本における作用を検討した。その結果、非脱分極性筋弛緩剤は、脳幹内ニコチン性アセチルコリン受容体にも作用し、中枢性呼吸抑制、中枢呼吸化学受容機能低下を惹起する可能性を報告した(Sakuraba et al. 2003;2005)。 4.これら成果をもとに中枢呼吸化学受容機構について考察を行い、化学受容細胞の細胞膜上のカリウムチャネルが二酸化炭素センサーとして重要な働きをしている可能性を報告し(Oyamada et al. 2006)、化学受容機構の解剖学的構築として延髄腹側最表層部において小型血管を取り囲んで存在する小型細胞が化学受容体細胞であるとの中枢呼吸化学受容体の細胞構築モデルを提唱した(Okada et al. 2006)。
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