細胞虚血時における細胞内局在の機能的意義を解析するため本年度以下の実験を行った。 1.生細胞でのPH可視化測定 改良したプローブ遺伝子を培養細胞に導入し生細胞レベルでの可視化測定を試みた細胞外液のpHを変えた場合、外液pHの変化に依存してその蛍光強度比は変化し、そのpKaはリコンビナント蛋白と同様であった。今回改良を行ったGFP利用pHプローブは、in vitroの結果と同様に蛍光強度並びに変化の程度が増大しており、S/Nの改善並びに検出力の改善が認められた。 2.α1受容体融合pHプローブ安定発現細胞の作出 発現量による影響を排除するため、今回Flp-in systemを利用し、CHO細胞に一遺伝子導入された各α1受容体サブタイプ融合PHプローブ安定発現細胞を作成した。 3.pHプローブ融合α1受容体の細胞内局在とリガンドによる移動 α1A受容体とα1B受容体は細胞膜近傍の蛍光の集積が認められ、細胞膜近傍に受容体が存在していることが示唆された。しかし、α1D受容体はほとんどの蛍光が細胞膜内側からのみ認められ細胞膜への受容体の集積はほとんど認められなかった。一方、pHの分布を見ると、膜近傍のpHは大きな差が見いだされなかったがα1B>α1Aとなっていた、細胞膜内側のpHはα1B>α1Aとなっており、細胞膜内側での受容体の局在部位が異なる可能性がしめされた。またα1D受容体近傍の細胞質中のpHはα1A受容体とα1B受容体の中間の値を示した。NE10-7Mの刺激によりα1Aおよびα1Bの細胞ではpHが低下した。α1A受容体はNE存在下ではPHは低下したままであった。しかし、α1B受容体のpHの低下は一過性であり直ちにpHは上昇に転じ、細胞内への受容体の有意な集積を認めた。pHの上昇を示さないα1A受容体では1時間観察しても細胞内への有意な集積は認められなかった。また、α1D受容体は、有意なpHの変化並びに局在の変化は認められなかった。 本年度の成果をもとに、次年度は細胞内pH変化によるHによる局在変化と機能の関連について検討を行い虚血モデルヘの適応を目指す。
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