細胞虚血時におけるα1アドレナリン受容体の細胞内局在の機能的意義を解析するため本年度以下の実験を行った。 1.細胞内イオン濃度による受容体局在変化 細胞膜局在型受容体であるα1B・細胞膜・細胞質局在型であるα1A・細胞質局在型α1D受容体それぞれの局在調節に関わる細胞内pHの影響を解析するため、細胞外液にNH4Cl 10mM並びに乳酸1mMを加えることにより細胞内pHを変化させた。NH4Clの投与により、細胞内pHは直ちに上昇し、ほぼ一定のpHを観察時間維持していた。α1B・α1A受容体はpHの上昇に引き続き細胞内への移行を示した。またその細胞内移行の程度は、α1B受容体ではリガンド刺激による移行に比べて軽度(〜40%)であったが、α1A受容体では受容体刺激による細胞内移行は認められ無かったが、pH上昇により細胞内移行を認め、異なるメカニズムにより局在が制御されていることが示唆された。一方、α1D受容体はpHの上昇による細胞内局在の明らかな変化は受容体刺激の時と同様に認められなかった。また、乳酸1mMの投与により、細胞内pHは直ちに低下し、ほぼ一定のpHを観察時間維持していた。α1B・α1A受容体はpHの低下に引き続き、細胞内から細胞膜への移行を示した。α1D受容体は細胞内pHの低下による細胞内局在の明らかな変化はpH上昇時と同様に認められなかった。細胞内pHを変えることにより、局在がpHにより制御されているサブタイプが存在し、制御機構がサブタイプ毎に異なる事が示された。 2.免疫電顕法による細胞内局在の決定 これまでの実験により、α1アドレナリン受容体サブタイプ毎に、pHからみた局在部位が異なりかつ、その局在・移動の制御メカニズムが異なることが示唆される。特に細胞内局在部位が不明であり、制御機構の理解は現在の光顕レベルでは困難である。このため、局在マーカーとの彊発現実験と平行して、GFP抗体を利用した免疫電顕を行い現在より仔細な局在部位の決定を行っている。
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