研究概要 |
ホヤ2細胞胚半側細胞(AB)のような分裂抑制した大型全能性細胞に、8細胞胚各種細胞(a4.2,b4.2,A4.1,B4.1)を接着、あるいは予測誘導物質を作用させることにより、ホヤ幼生の基本的分化型である表皮細胞型、筋細胞型、神経細胞型に誘導制御する。また、各分化型に、神経細胞型で明らかにされたように頭側、尾側に特異的なイオンチャネルの発現があれば、その部域特異性も誘導制御することを目的とした。 結果:1.2細胞胚半側割球AB(2C細胞)の分裂抑止胚細胞に、この割球よりさらに先行して発生している8細胞胚a4.2A4.1ペアを接着させ培養すると、2Cはa4.2 A4.1ペアからの神経誘導によりNa活動電位がみられ、頭側神経型に分化した。2.2Cにa4.2ペアを接着させ培養すると、a4.2ペアは表皮細胞に分化するが、2Cは神経細胞(頭側神経型や尾側神経型)に分化した。3.2CにA4.1ペアを接着させ培養すると、誘導細胞であるA4.1は分化が不完全であるにもかかわらず、2CはA4.1による神経誘導により、おそらく尾側神経型細胞に分化した。4.2Cにb4.2ペアを接着させ培養すると、b4.2ペアは表皮細胞に分化しツニカ膜の発現がみられるにもかかわらず、2Cは筋細胞型に分化し、発生50時間後にはCa2+電流が、さらに分化が進行するとA型K+および遅延整流性K+電流が観察された。2Cの誘導性分化がおこらなければ、3細胞とも表皮に分化した。5.2CにB4.1ペアを接着させると、何れの細胞も筋細胞型に分化した。6.何れの細胞の組み合わせの場合でも、分裂抑制下における誘導性分化が進行しないときには、2Cは常に表皮に分化しツニカ膜を形成した。逆に、ペア細胞による誘導をうけると、2Cはそれ自身のデフォルトの表皮分化ではなく、接着細胞の細胞運命の何れかに従い分化した。
|