研究概要 |
組織再生に関与する因子は、その組織を構成する細胞と心・血管系を介した循環血液中との双方から動員される。肝障害後の再生過程において、線溶系因子を中心とする蛋白分解カスケードは、細胞外基質の分解・再構築や障害細胞の除去などへの関与が考えられる。本研究では、骨髄細胞移植した線溶系のノックアウトマウス(-/-)におけるplasminogen (Plg)とそれを制御するα_2-antiplasmin (α_2-AP)の四塩化炭素肝障害後の肝再生過程への関与について解明することを目的としている。 本年度は、Plg/α_2-AP系のノックアウトマウスにおける肝再生能について骨髄細胞移植の効果を比較解析した。まず、骨髄細胞の非移植マウスの四塩化炭素肝障害後において、Plg-/-は細胞外基質の蓄積を伴う肝再生不全が、また、α_2-AP-/-で肝再生亢進が認められた。これらの結果から、肝再生過程において細胞外基質の分解・再構築にPlg/α_2-AP系の重要性を示唆した(J Hepatology 2004,Life Scien 2003)。さらに、心・血管系においてもPlg/α_2-AP系は組織修復における血管新生因子に関わる因子の発現調節に関与することを見出した(Blood 2003,J Thromb Haemost 2003,Thromb Res in press) また、骨髄細胞移植マウスの実験系においては、四塩化炭素肝障害後にレシピエントマウス(Plg-/-)の再生過程の肝臓内またはその分離肝細胞内にドナーマウス(Plg+/+)のPlg遺伝子(PCR法)およびPlg蛋白(Western blot法)の発現が確認できた。また、肝臓切片のヘマトキシレンーエオジン染色において、Plg-/-にPlg+/+の骨髄細胞を移植したマウスはPlg-/-にPlg-/-の骨髄細胞を移植したマウスより障害部位の減少が見られ、肝再生の亢進を示した。 以上のことから、レシピエントマウスの肝再生過程の肝臓内にドナーマウスの移植・生着した骨髄細胞から肝細胞の誘導堺示唆された。次年度は移植骨髄細胞から肝細胞への誘導のメカニズム解明の目的で遺伝子・蛋白質および細胞の挙動を解析する。
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