低浸透圧性アミノ酸放出を起こす細胞として、グリオーマ細胞(C6)を使用した。既に、C6細胞においては、低浸透圧刺激に応じてグルタミン酸放出が起こることを確認し、その放出経路が従来予想されてきたような容積感受性Cl-チャネルや、グルタミン酸トランスポータとは異なることを報告しているが、その過程で、低濃度の水銀が細胞膨張性グルタミン酸放出を抑制するという予備的な知見を得ていた。しかし、酵素的発色反応によるグルタミン酸測定システムを用いた場合は、見かけ上、グルタミン酸放出の抑制が認められたものの、HPLCを用いた測定では、細胞外への水銀投与により、むしろグルタミン酸が上昇するという結果を得た。これは、水銀自体が、酵素的な測定系に影響を与えていたものと考えられた。このことから、水銀をアクアポリンの抑制剤として使用するプランは実行できなかった。一方、一連の実験の過程で、偶然、細胞外液にグルコースを加えた際に、細胞外グルタミン酸が上昇することを見出した。これは、低浸透圧刺激は必要とせず、グルコース単独でグルタミン酸放出を引き起こした。この過程は、Cl-チャネル阻害剤や、グルタミン酸トランスポータ阻害剤では抑制されなかった。また、ショ糖、乳糖、ガラクトース投与では、グルタミン酸放出は惹起されなかった。これらの結果は、平成16年度生理学会において発表予定である。
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