研究概要 |
1.甲状腺ホルモン受容体TRを介したフルクトース輸送担体GLUT5の転写調節と脱リン酸化シグナルによる修飾:分化型ヒト小腸様細胞株Caco-2にT3およびMAPK阻害剤U0126を投与したところ、コアクチベータ(SRC-1,CBP, p/CAF)の発現量を変えることなく、GLUT5遺伝子のTR応答領域(GLUT5-TRE)を介した転写活性が相乗的に増大した。GLUT5-TREにはTRα-1/RXRαが結合しており、この結合はT3および脱リン酸化処理により増大した。離乳期ラットへのT3の腹腔内投与は小腸のGLUT5遺伝子発現を増大させたが、その発現は小腸管腔内をフルクトースで灌流することによってさらに高まった。従って、TRを介したGLUT5遺伝子の発現調節には、T3と脱リン酸化シグナルの両方が関与しているものと考えられた。また、食事由来のフルクトースは、T3の効果を助長し、脱リン酸化シグナルと同様の効果をもたらすことが示唆された。 2.脂肪酸核内受容体PPARにより発現調節を受ける消化吸収関連遺伝子のプロテオミクス解析:Caco-2細胞にPPARαおよびPPARδのリガンド結合ドメインのキメラタンパク質発現ベクターを導入して、脂肪酸組成によるPPARの活性化因子としての特徴を系統的に評価したところ、特に炭素鎖18-20、二重結合3-5の脂肪酸がPPARαを介して強く脂肪酸/ビタミンA吸収関連遺伝子の発現を促進することが明らかになった。PPARδの標的遺伝子を探索するために、C2BBe-1細胞をPPARδの合成リガンドで処理した後、発現が変動したタンパク質を二次元電気泳動法により網羅的に解析し、MALDI/TOF質量分析法を用いて同定した。その結果、PPARδはミトコンドリアにおける脂肪酸酸化分解系の亢進に関与することが示唆された。
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