本研究は授乳期あるいは成長期に皮膚へ加える触刺激により、成熟後の自律神経機能にどのような影響が出現するかについて検討することを目的とする。研究初年度の本年度は、成長期のラットに拘束ストレスを加え、その拘束中に皮膚触刺激を加えることにより、触刺激がストレス下の成長にどのような影響をもたらすかについて検討した。拘束ストレスはラットを人間の手で5分間持ち上げて保持することにより加えた。成長は体重と摂食量を指標として検討した。実験は生後25日齢のラットを無作為に(1)何もしない群、(2)毎日5分間拘束ストレスのみを加える群(以下、拘束ストレス群)、(3)毎日5分間の拘束ストレス中に腹部に触刺激を加える群(以下、拘束+触刺激群)の3群に分けて行った。これらの刺激は毎日4週間にわたって加え、その間体重と摂食量を毎日測定した。また刺激を加えるのをやめた後も1週間にわたり持続的効果(5週目)を検討した。その結果、拘束ストレス群は何もしない群に比べて、実験開始から4週目と5週目に有意な体重低下を認めた。この体重低下は拘束+触刺激群では認められなくなった。体重のこれらの変化に先行して摂食量にも同様の変化を認めた。すなわち、拘束ストレス群は何もしない群、拘束+触刺激群と比べ、摂食量が実験開始から3週目と4週目に有意に低下した。そこで給餌量を制限し、体重に認められた変化が摂食量変化に依存するものであるのか否かを検討した。餌制限下での給餌量は自由給餌での拘束ストレス群の最小摂食量をプロットすることで回帰曲線を描き、そこから算出された量を与えた。給餌量制限下での体重変化は、何もしない群、拘束+触刺激群共に拘束ストレス群とほぼ同様となった。以上の結果より、皮膚への触刺激はストレス時の摂食量低下を軽減させることにより、成長抑制を防止する効果のあることが明らかとなった。
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