研究概要 |
本研究は、授乳期あるいは成長期に皮膚へ触刺激を繰り返して与えることにより、成熟後の自律機能にどのような影響が出現するかについて検討することを目的とした。実験はラットで行った。触刺激は生後25日齢のラットの腹部皮膚に毎日5分間ずつ4週間、徒手にて加えた。その結果、以下のことが明らかとなった。 1.成長期のラットに拘束ストレスを加え、その拘束中に皮膚触刺激を加えることにより、触刺激がストレス下の成長にどのような影響をもたらすかについて検討した。その結果、皮膚への触刺激はストレス時の摂食量低下を軽減させることにより、ストレスによる体重低下を防止する効果のあることが明らかとなった。 2.成長期に加えた触刺激により、成熟後、皮膚へのピンチ刺激(ストレスの一つ)に対する循環反応(体性-循環反射)がどのように変化するかを検討した。その結果、成長期に加えた触刺激により、脊髄を中枢とする体性-循環反射が亢進することが明らかとなった。一方、脊髄より上位の中枢を介する体性-循環反射には成長期に触刺激を加えて育てた群と加えなかった群とに有意差を認めなかった。これらの事実より、痛み刺激に対する脊髄性の循環反射を抑える上脊髄性機構が触刺激群では亢進している可能性も示唆された。 3.側坐核のドーパミンは種々の自律機能に影響を与えることが知られている。そこで,成長期に加えた触刺激により、成熟後、皮膚への刺激(ピンチ並びに触刺激)に対する側坐核のドーパミン放出反応がどのように変化するかを検討した。その結果、皮膚刺激時の側坐核ドーパミン放出反応に対して、成長期に加えた触刺激は影響を与えないことが明らかとなった。 以上、種々の自律機能が成長期に加えた触刺激によって修飾を受けることが明らかとなった。
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