魚油は、抗肥満、耐糖能改善、血中脂質低下作用等を有することが知られており、積極的な魚の摂取によって生活習慣病予防効果が期待できる。また近年、抗肥満因子として知られるレプチンが、直接あるいは交感神経系を介して末梢組織に作用し、インスリン抵抗性を抑制することが報告されており、魚油摂取量と血中レプチンレベルの関係が注目される。そこで、初年度に、魚油摂取量と血中レプチンレベルの検討を行なった結果、魚油摂取によって血中レプチン量ならびに脂肪組織のレプチンmRNA発現量が低下することが確認された。この現象が、脂肪組織の減少によるものなのか、直接的な魚油摂取によるものなのかは定かでない。また一方で、魚油は、酸化されやすいn-3系脂肪酸を多く含むという特徴を有しており、魚油の有効性に関する報告は少量摂取によるものであり、多量摂取による報告はほとんどなされていない。 そこで、さらに、高炭水化物食摂取条件下(魚油20%脂肪エネルギー食摂取)と高魚油食摂取条件下(魚油50%脂肪エネルギー食摂取)で、魚油摂取の肥満、耐糖能異常ならびに血清脂質レベル、過酸化脂質レベルに及ぼす影響を検討した。その結果、魚油摂取量が高いと、顕著な抗肥満、特に内臓脂肪の現象が見られ、血中レプチンならびにインスリンレベル、さらに血中TG、TCレベルが低下することが明らかになった。この時、肝臓の過酸化脂質レベルは顕著に増加し、この過酸化脂質の消失に関与すると報告されている肝臓のUCP2 mRNAレベルならびに骨格筋のUCP3 mRNAレベルが上昇することが明らかとなった。以上の結果より、抗肥満、耐糖能改善、血中脂質低下作用を目的とした魚油摂取は、20%脂肪エネルギーレベルの摂取が適切であると考えられる。
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