研究課題
基盤研究(C)
血圧はノンレム睡眠(熟睡する睡眠)中に安定し、レム睡眠(夢見る睡眠)に移行すると急激な一過性の上昇や激しい基線の揺れが起こる。特に明け方4時頃に起こる突然死はこの急激な血圧変化が要因とも言われているが、その詳細なメカニズムは解明されていない。アデノシンは内因性睡眠誘発物質であり、ドーパミンは血圧の日内リズムや睡眠中の血圧調整に関与する。そして、脳内ではアデノシンA_<2A>受容体(A_<2A>受容体)とドーパミンD_2受容体の機能は拮抗的に作用する。本研究では、A_<2A>受容体を介してアデノシンやドーパミンが睡眠中の循環動態に与える影響を明らかにするために、野生型とA_<2A>受容体欠損(KO)マウスの脳室内に、A_<2A>受容体の特異的拮抗薬や作動薬の微量持続投与を行い、中枢神経系からのシグナルによる睡眠中の血圧と心拍数の変化を測定し、その調節機構について検討した。まず、マイクロダイアリシス法を用いて、アデノシン依存症睡眠の誘発機構を調べた結果、A_<2A>受容体作動薬の投与により視床下部に存在する睡眠中枢が興奮し、GABA系抑制性神経投射を介して後部視床下部に存在するヒスタミン系覚醒中枢の活動を抑制することを証明した。次に、平均動脈圧と心拍数を測定した結果、野生型とA_<2A>受容体KOマウス共に夜間(活動期)に高く昼間(休息期)に低い日内リズムを示し、両者に有意な差はなかった。しかし、野生型マウスの平均動脈圧はレム睡眠期に減少し、レム睡眠直後にさらに一過性に減少後、元のレベルに回復した。一方、心拍数はレム睡眠期に減少し、レム睡眠直後に急激に上昇し、ゆっくりと元のレベルに回復した。これとは逆に、A_<2A>受容体KOマウスでは、平均動脈圧と心拍数ともにレム睡眠期に明らかに上昇し、レム睡眠直後に一過性に急激に減少することを見出した。これらの結果は、A_<2A>受容体はレム睡眠中の自律神経の調節に関与することを示している。
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