ウレタン・クロラロース麻酔人工呼吸ラットの体幹背部の毛を剃り、皮膚温度が2-6℃程度下がるように冷刺激を行ったところ冷刺激の強度に応じて酸素消費率が増加した。この反応には頻脈と筋電図反応を伴っていた。筋弛緩剤を前投与しておくと冷刺激に対する筋電図反応は消失したが、酸素消費と頻脈の反応は影響されなかった。一方、βアドレナリン受容体の阻害薬であるプロプラノロールを前投与した場合には冷刺激に対する筋電図反応には変化がなかったが、酸素消費と頻脈の反応はともに大きく減弱した。したがって、本実験条件下では主として非ふるえ熱産生が誘起されたことが分かった。脳波を記録してパワースペクトルを分析すると、冷刺激によってデルタ波成分が減少し、シータ波成分が優位になった。後肢に侵害刺激を与えたときも脳波は冷刺激時と同様な変化を起こしたが、酸素消費率に変化はなかった。したがって脳波の変化と熱産生とには直接の相関はなかった。次に大脳皮質を吸引除去したラットで冷刺激に対する反応を調べたが、非手術群と同様に熱産生反応が誘起された。しかし、視床下部と中脳の間を切断したラットでは冷刺激に対する熱産生反応は誘起されなかった。したがって、皮質下の前脳部に非ふるえ熱産生を司る脳部位が存在し、大脳皮質は本質的には関与していないことが分かった。
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