1.外向き整流性を示すとされるC1Cチャネル(C1C-3、-4、-5)のヒトリンパ球における遺伝子発現をRT-PCR法により検討した。非活性化状態の場合、T細胞ではC1C-3とC1C-5が、B細胞ではC1C-3、C1C-4、C1C-5が発現していた。活性化状態の場合、T細胞ではClC-3が、B細胞ではC1C-3とC1C-4が発現していた。 2.COS1細胞にC1C-3Bとp56^<lck>を共発現させると、C1C-3Bはp56^<lck>によるチロシンリン酸化を受けた。C1C-3Bのアミノ酸配列のうち、リン酸化を受ける可能性があるY342、Y689、Y859の3つのチロシン残基のうちの1つ、あるいは複数をフェニルアラニンに置換した変異株を用いた検討から、Y859がp56^<lck>により特異的にリン酸化されることがわかった。スプライシングバリアントであるC1C-3Aには対応するチロシン残基がなく、p56^<lck>によりリン酸化されなかった。 3.HT-1080細胞を用いて免疫蛍光染色を行った。C1C-3Bは単独で発現させると主に細胞内領域に分布していたが、p56^<lck>を共発現させると細胞膜表面への発現が増加した。 4.C1C-3ノックアウトマウス(C1C-3 KO)では野生型マウス(WT)と比較して、胸腺細胞数、脾臓T細胞数ともに減少していた。胸腺細胞の分化はClC-3KOで異常は無かった。TCR刺激による細胞増殖は、胸腺細胞、脾臓T細胞ともに、WTと比較してC1C-3KOで抑制されていた。活性化させたT細胞に抗CD3抗体や抗fas抗体を用いてアポトーシスを誘導した場合の細胞死は、WTとC1C-3KOの間で差はなかった。C1C-3KOのT細胞には比較的大きな電流密度のcharybdotoxin感受性K^+電流が発現しており、これがC1C-3チャネルの欠損を代償している可能性があると考えられた。
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