研究概要 |
プラスミンを中心とする線溶系は現在までに血栓溶解の主たるカスケードとして生理・生化学的に生体における重要性が確認されてきた.近年,これらの系は新たに蛋白溶解系として注目され,細胞増殖・遊走に関与し生体においては癌の増殖・転位,各々臓器の再生過程に深く関与する可能性が示唆されている. アルファ2アンチプラスミンは,プラスミンの特異的阻害物質で,血中に存在して線溶系を制御している.先の実験で我々はプラスミンが細胞外組織に存在する血管内皮細胞増殖因子(VEGF)の遊離を促進して血管透過性を亢進することを示し,さらに心臓における急性虚血時致死的変化を示すことを報告した(Matsuno H et al., Blood 2002).本年は,これらの成果をさらに発展させて血管内皮細胞の障害後の修復(血管リモデリング)にプラスミンが重要な役割を担うことを証明し,かつこれらの反応には血中プラスミノーゲンより内皮細胞上に結合するプラスミノーゲンが必要であることをアルファ2アンチプラスミンの欠損マウスを用いて示した(Matsuno H et al., Blood 2003).さらに,アルファ2アンチプラスミンの欠損は血液中において血小板のプラスミンによる活性化を促し,本来抗血栓性に作用するプラスミンがある状況下では,むしろ血小板を活性化して易血栓性を示す可能性が示唆された(Takei M., Matsuno H., et al., J.Thromb.Thrombolysis 2002).これらの研究成果は,来年度への継続研究としてさらなる発展を目指している.
|