研究概要 |
生体防御反応は、白血球を中心とする細胞間相互作用によって営まれ、それら細胞の活性化は液性因子ならびに接着分子を介して制御されている。液性因子としてすでに多くのサイトカイン、ケモカイン分子が同定されているものの、敗血症に代表されるSIRSあるいはCARS病態形成に関与するような血中因子の解析は殆ど進んでいない。このような背景に立って本研究では、以下の諸点について明らかにした。 1)現在我が国の敗血症治療には、血中LPSの除去を目的としてポリミキシンB結合カラム(PMX)への直接血液還流法が用いられている。本研究では、LPSの吸着除去に加え、液性タンパク因子の除去仮説の下に、網羅的、系統的な吸着タンパクプロファイリングとそれらの白血球細胞機能に対する効果の評価をおこなった。 2)群特異的リガンド(ポリミキシンB)でアフィニティ精製された血漿蛋白複合体プロテオミクスの解析により、S100A8,S100A12などのEFハンドカルシウム結合タンパクと、MIFならびにHMGB1を同定した。精製されたS100A12を用いてIL-18による刺激・非刺激時の単球/マクロファージ上のICAM-1、B7.1、B7.2、CD40、CD29、CD62L、CD31などの接着分子群の発現に対する効果を明らかにした。同様に、HMGB1の作用特性について解析した。 3)同定された因子の中で、HMGB1はエンドトキシン血症の致死応答に関与するメディエターと考えられている。組み換え体ヒトHMGB1タンパクを大腸菌に発現させることに成功した。大量精製法を目下検討しているが、この標品を得て敗血症における役割の研究に発展させる計画である。
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