研究課題/領域番号 |
15590229
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
秀 和泉 広島大学, 医学部, 教務員 (20253073)
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研究分担者 |
仲田 義啓 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (40133152)
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キーワード | ミクログリア / ATP / P2X_7受容体 / TNF / ニコチン / 神経保護 / in vivo |
研究概要 |
脳に定住するミクログリアは死細胞や異物を貪食することから脳の‘掃除屋'と考えられてきたが、近年神経細胞の生存を決定づける極めて重要な役割を果たす可能性が明らかとなってきた。これまでに私たちはミクログリアと神経細胞の共培養系を用いて、ATP刺激を受けたミクログリアはグルタミン酸誘発神経細胞死に対して神経保護効果を発揮すること、この効果はP2X_7受容体活性化とそれによって誘導される腫瘍壊死因子(TNF)の放出が必須であること、一方、大量のTNFを放出するリポポリサッカライド(LPS)刺激には神経保護効果は認められずむしろ神経傷害を促進することなどを明らかにしてきた。さらに、P2X_7活性化ミクログリアはその後LPS刺激を受けても神経保護活性を維持すること、さらに、TNF遊離はATP単独刺激にほぼ匹敵する程度に抑えられていることから、少なくともTNFの量がミクログリアの神経保護および神経傷害の2面性に相関する可能性が考えられた。一方、ミクログリアに発現する新規α7ニコチン性アセチルコリン受容体の活性化もLPSによるTNF遊離を抑制し、かつ神経保護活性のあるATP誘発TNF遊離を有意に増強した。さちに、ミクログリアの神経保護活性をin vivoで確認するため、中大脳動脈閉塞(MCAO)モデルラットを用いて検討した。MCAOラットには運動機能に著しい低下と梗塞側の大脳皮質、特に線条体において強い神経細胞死が認められた。ミクログリアの脳内移植により運動機能の低下・神経細胞死ともに抑制され、さらに、P2X_7受容体活性化ミクログリアではその保護効果はより強まる傾向が認められた。これらの知見は、今後増加が懸念される脳血管障害や神経変性疾患の新しいミクログリア細胞治療の基礎を形作るとともに、P2X_7およびα7受容体も治療薬の標的となりうる可能性を示唆するものと考えられた。
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