研究概要 |
心臓・血管系ミトコンドリアにおけるエネルギー代謝に関連した活性酸素及び細胞内シグナリングを病態急性期について明らかとする目的で、急性循環負荷モデルラットにおける循環動態と心臓・大動脈におけるMAPK活性に対する抗酸化薬とミトコンドリアATP感受性Kチャンネル(mitoKATP)作用薬の効果を比較検討した。 雄性ラットを用いてAngiotensin II (AngII)急性投与による活性酸素依存性心血管系MAPK活性(phospho-ERK1/2,p38,JNK)の上昇を見た。同様の効果はα1アドレナリン受容体刺激薬であるphenylephrineでも認められ、この結果は報告された(Hypertension,2004;43:1-8)。さらにtempol処置により慢性高血圧では血圧の正常化が認められるが、急性昇圧に対しては降圧効果は認めなかった。本研究では、急遽AngII持続静脈内投与中の活性酸素依存性血圧維持機構を視野に入れ検討し、12時間でほぼ完全に活性酸素依存性の血圧維持に移行することが認められた。この結果については、現在投稿中である。またβアドレナリン受容体刺激薬(Isoproterenol)によっても用量依存的な心血管系redox-sensitive MAPK活性の上昇を確認した(投稿準備中)。 以上のことを背景に、AngII刺激による心筋、大動脈の活性酸素の由来についてmitoKATP阻害薬である5-HDを用いて検討した。興味深いことに、5-HD処置によりAngIIで誘導される心血管系MAPK活性増強のうちp38とJNKの両者が抑制され、ERK1/2には影響を認めなかった。さらに心筋虚血再環流障害におけるAngII前投与によるプレコンディショニングを確認し、この効果にミトコンドリア由来活性酸素の重要性が認められた(投稿準備中)。
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