研究概要 |
細胞外カルシュウムイオンの流入経路であるカルシュウムチャネルは、チャネル孔を形成するα-subunitとその機能および形質膜へ発現調節にかかわるβ,γ,δ-subunitより形成されている。β-subunitは心筋α-subunitのカルシュウムイオン流入量の調節に重要な役割を持っていることが知られており、心筋収縮力の調節と手段のしてβ-subunitを心筋細胞に導入することも検討されている。私たちは、α-subunitのリン酸化とβ-subunitがそのチャネル機能にどのように関わっているのかを検討し平成14年度〜平成15年度の研究によりα-subunitリン酸化部位とβ-subunitの関係について以下のことを明らかにした。 1)α-subunitリン酸化部位を他のリン酸化を受けないアミノ酸に置換すると、リン酸化部位を持つβ-subunit発現量に関わらず、リン酸化による活性化は消失する。 2)α-subunitリン酸化部位を他のリン酸化を受けないアミノ酸に置換すると、カルシュウムチャネル活性化にみられたβ-subunitの量的な関与が消失する。 今年度の研究においては、カルシュウムチャネル活性化をもたらすリン酸化とβ-subunitの量的関係について蛋白リン酸化酵素(A-kinas)の阻害剤H-89を用いて検討した。その結果 1)H-89はα-subunit単独で活性化されたカルシュウム電流には影響しない。 2)過剰なβ-subunit存在とα-subunitの発現により活性化されたカルシュウム電流は、H-89により抑制される。 3)β-subunitとα-subunitの等量な発現により活性化されたカルシュウム電流は、細胞内cAMP過剰状態ではH-89により抑制されるが、cAMPがなければ抑制されない。 これらの結果より、β-subunitはbasal levelでのカルシュウムチャネルα-subunitリン酸化を制御する機能を持つことが推察された。
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