研究概要 |
BALB/cマウス脊髄後根神経節(DRG)ニューロンとシュワン細胞の共培養系に強い焦点パルス磁気刺激を与えると、ニューロン,シュワン細胞ともに不可逆的な壊死を起こし、再髄鞘化現象は検討不能であったが、自然回復により50%以上のニューロンに再髄鞘化を起こさせるような適度な条件で処置しながら、NGF, BDNF, b-FGFおよびEGFを与えると、NGF>BDNF>b-FGFの効果順位で再髄鞘化を促進するのが確認され、EGFはほとんど無効であった。また、NGF受容体の中和抗体は再髄鞘化を著しく阻害した。一方、DRG構成ニューロンのうち30%のニューロンで発現し、NGF受容体と類似した役割を持つと言われているc-KITチロシンキナーゼ受容体の中和抗体(ACK2)では有意な再髄鞘化の阻害は観察されなかった。 以上より、焦点パルス磁気刺激で共培養標本内に発現が増加したNGFを中心としたサイトカインとその受容体による神経栄養機能が、再髄鞘化においても重要な役割を果たしていることが示唆された。 再髄鞘化過程におけるCa^<2+>シグナルの細胞内トポロジーは同磁気刺激を伴った再髄鞘化過程と対照群の再髄鞘化過程で、ニューロン,シュワン細胞ともに有意な差は認められなかった。また再髄鞘化過程にあるニューロンの神経伝達物質(GABA,5-HT)応答も、対照群と磁気刺激群で有意な差は認められなかった。 以上より、焦点パルス磁気刺激は各種サイトカインの放出とその受容体の発現を促すことによって神経組織再生過程の一環として再髄鞘化を促すことが示唆された。またその過程で、ニューロン機能の特性変化は伴わないことから、神経組織再生における適度な興奮と神経栄養因子ホメオスターシスの重要性が示唆された。
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