研究概要 |
本研究は,(1)NMRならびにモデリングを用いてβ-受容体(βAR)とリガンドとの相互作用部位(結合部位)の三次元構造の解析、(2)これらの結果からリガンドのドラッグデザイン(理論設計)、(3)理論設計に基づいたβARに作用するリガンド誘導体の合成,(4)新規合成した化合物とβARの立体構造解析からリガンド-レセプターの相互作用部位の解析,(5)受容体蛋白の変異体(ミューテイション)によるアミノ酸残基を置換することによる結合部位の解析を行い、最終的には創薬研究に寄与するモデリングの有用性を明らかにすることを目的としている。 そこで、本年度の研究実績の概要は以下の通りである。1)(1)イソプロテレノール(β_3-AR作動薬)のイソプロピル基に相当する端末に様々な置換基(芳香環)を導入する、(2)炭素数を変更する、(3)フェノール環に置換基を導入する、(4)エタノールアミン基に二重結合を導入する、(5)フェノキシ酢酸基に分子量の大きい置換基を導入する、など種々の新規な化合物の合成をおこなった。2)さらにこれらの化合物の中でフェノキシプロパノールアミン誘導体であるSWR-0334NA (E-4-5-3-phenoxy-2-hydroxypropyl-amino-2-pentene-3-yl)、SWR-03355A (E-4-5-3-phenoxy-2-hydroxypropyl-amino-2-pentene-3-yl)、SWR-03425A、SWR-03485A、SWR-0315NA((E, Z)-4-1-2-3-phenoxy-2-hydoroxypropyl-amino-etyl-1-propenyl-phenoxy)やSWA-03615Aを用いてCOS-7細胞に発現させたβ-受容体サブタイプ(β_1-、β_2-、β_3AR)と結合親和性およびc-AMP産生能について検討をおこなった。その結果、これらの化合物のβ_3ARに対する親和性およびcAMP産生能は高い値を示した。一方、他の化合物(SWR-0065HA,はSWR-0098NAやSWR-0302HAはβ_3受容体に対して低い親和性を示したがcAMP産生能は示さなかった。以上の結果より、β_3ARとリガンドとの構造活性相関が存在することを証明したので次年度の実験計画にこれらの結果は十分に役に立つデータであると言える。
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