昨年度より運用中のヒスタミン定量系により、菱田らの樹立したエチルアルコール高嗜好性/低嗜好性ラット脳のヒスタミン及びメチルヒスタミンを定量し、高嗜好性ラットでは低嗜好性ラットに比べ、大脳皮質でのヒスタミン、N^τ-メチルヒスタミンが増加傾向にあることを見出した。さらに、大脳皮質切片でイノシトールリン酸の代謝回転を測定すると、ノルアドレナリン、カルバコールによる刺激では、高嗜好性ラットと低嗜好性ラットに差は見られなかったが、ヒスタミン刺激によるものは、高嗜好性ラットで低下していた。1.0g/kgのエチルアルコールを14日間連続投与した後では低嗜好性ラット大脳のヒスタミンによるイノシトールリン酸代謝回転は低下し、高嗜好性ラットとの差が見られなくなった。アルコールにより感作が生じるとヒスタミンに対する感受性が低下することを示唆しており、高嗜好性ラットのアルコール嗜好性の一因に低嗜好性ラットに比べ薬物無処理の状態でのヒスタミン感受性の低下があることを示唆している。この現象はアルコールのみに対するものではなく、メタンフェタミン依存状態のマウスでも類似した現象を認めており、ヒスタミンと薬物/嗜好品依存の関連についてはさらに研究を続行中である。 ヒスタミンN-メチル基転移酵素遺伝子ノックアウトマウスは、ES細胞レベルで組み変え体を得て、組み変え胚を作成し、凍結保存中である。これについては引続き解析を続行する予定である。
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