組み替え動物の受け入れの準備に予想以上の時間がかかったため、本研究の当初の目的であった、ヒスタミンN-メチル基転移酵素遺伝子欠損マウスの作成は研究終了年度である本年度も完成することは出来なかった。 一方、昨年度の研究により、ヒスタミン神経系の関与が強く示唆された覚醒アミンによるマウス行動感作、常同行動について、並行して研究を進め、A型モノアミン酸化酵素阻害薬であるクロルジリンの単回投与によりメタンフェタミン少量投与によって起こるマウスの自発運動量増加が抑制されること、マウスをメタンフェタミンで行動感作した後、クロルジリンを5日間反復投与すると、その後にメタンフェタミンを投与した場合に比べ行動量の増加が抑制されることが判った。より大量のメタンフェタミンを投与した場合に見られる常同行動に対しては、マウスではクロルジリンを少量前投与した場合にその発現が遅れたが、この効果にはクロルジリンの用量依存性がなく、また、ラットでは同様の効果は全く見られなかった。従って、クロルジリンはメタンフェタミンによる自発行動量増加作用や行動感作成立後の逆耐性減少には抑制的に作用することが判ったが常同行動発現作用に対する抑制作用ははっきりとは認められなかった。2-フェニルエチラミンは大量投与するとマウスに約分後から約40分間続く常同行動を起こす。2-フェニルエチラミンの投与2時間前にB型モノアミン酸化酵素阻害薬であるセレギリンを投与すると、常同行動は40分以上持続し、この効果はセレギリンの用量に依存した。2-フェニルエチラミンによる自発運動量の増加にはセレギリンははっきりとした影響を与えなかった。
|