研究概要 |
TGF-βファミリーの中で、アクチビンとマイオスタチンの情報伝達機構に着目し、その詳細な制御機構を解析した。アクチビンとマイオスタチンは細胞膜上のアクチビンタイプII受容体(ActRII)を介して情報伝達を行う。ActRIIのカルボキシル末端にはアダプター分子としてARIP1,2(activin receptor-interacting protein 1,2)と呼ばれるPDZタンパク質が会合し、受容体の局在化、情報伝達の統合に関与する。本年度は、ARIP2(activin receptor-interacting protein 2)に少なくとも4種類のスプライシングバリアント(ARIP2,2b,2c, OMP25)が存在することを明らかにした。ARIP2がRal-RalBP1経路でアクチビン受容体の細胞内取り込みを促進し、アクチビンの情報伝達を抑制するのに対して、ARIP2b,2cはRalBP1には結合せず、逆に細胞膜に存在するII型アクチビン受容体の量を増大させそのシグナルを増強する事を示した。 次に、アクチビン及びマイオスタチンの細胞外の制御分子である、フォリスタチン(FS)についての解析を行った。FSは強い肝再生作用を有するが、アクチビン受容体発現量の変動がその作用機序の一つであることを示した。FSを構造変換させ、マイオスタチン特異的な阻害因子を作製し、筋ジストロフィーの病態を軽減することを遺伝子改変マウスを用いて証明した。最後に、TGF-βやアクチビンによって増殖抑制されない膵臓癌種に対する5-FU,シスプラチンなどの抗癌剤耐性獲得機構に癌細胞周囲の微少環境で発現するラミニン、コラーゲンなどの細胞外基質が関与することを示した。
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