昨年度の本研究において、マウス再生肝において、ヘム分解系律速酵素ヘムオキシゲナーゼの誘導型アイソザイムであるHO-1が特異的に誘導されており、その際、ビリベルジンが一過性に蓄積していることを明らかにした。本年度は、肝再生に不可欠のイベントと考えられる血管形成に着目し、HO-1誘導との関連性について検討した。 組織学的検討の結果、部分肝切除後門脈周辺に、HO-1高発現細胞であるクッパー細胞の有意な増加を伴う活発な血管新生が起こっていることが分かったので、次にES細胞から血管内皮細胞へと分化誘導させるin vitroの実験系にヘミンを添加することによるHO-1誘導の影響を検討した。培地中にヘミンを添加すると、最終濃度50〜100μMで濃度依存的な血管形成促進効果が認められ、100μMヘミン添加群においては、active controlのVEGF添加群より強い血管形成促進効果が観察された。この実験系で血管内皮細胞のマーカーであるCD31とHO-1の特異的抗体を用いてダブル染色し共焦点顕微鏡で観察したところ、培養初期では血管特有の網目構造は認められず、HO-1の広範な分布に一致したCD31発現細胞が認められた。その後CD31陽性細胞による網目構造の発達とともに、HO-1発現細胞との解離が認められたが、互いに近接した領域に分布していた。以上の結果から、血管形成においてHO反応生成物が関与する可能性が考えられた。そこで、HO反応生成物としてビリベルジンもしくはビリルビンを培地中に添加したところ、ヘミン添加と同様な効果が認められた。ビリベルジン、ビリルビンはともに再生肝で有意な増加を既に認めており、以上の結果から、肝再生時のHO-1誘導が反応生成物を介して末梢血中のstem cellの分化を促し、活発な細胞増殖に必要な血管形成を促進していることが示唆された。
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