研究課題
ミリストイル基の膜画分への局在のためのアンカーとしての役割は早くから考えられていたが、脳に特異的に発現しているNAP22のミリストイル基が細胞内シグナル伝達系の主要な制御因子であるカルモジュリンとの間相互作用の制御にも関わっていることを新たに見出した。この相互作用はプロテインキナーゼCによるリン酸化により制御され、NAP22のカルモジュリン結合ドメインを介してカルモジュリンの関与するシグナル伝達系、プロテインキナーゼCの関与するシグナル伝達系、細胞膜領域でのシグナル伝達系がクロストークしていることを明らかにした。これまでにこの相互作用が、1)ミリスチル基依存的であること、2)リン酸化により抑制されること、3)モル比が2:1の複合体を形成すること、また、複合体形成時に、4)カルモジュリン結合部位が既知の複合体で見られるようなαヘリックスを形成していないこと、5)慣性半径が既知のそれよりも大きいこと、などを明らかにした。現在は、NAP22とカルモジュリンの相互作用が脳内におけるシグナル伝達系の制御にどのように関与しているのかに着目して研究を進めている。HIVnef遺伝子産物やsrcがん遺伝子産物pp60srcなどNAP22以外の複数のミリストイル化タンパク質に関しても、同様の機能制御機構があることを明らかにし、ミリストイル基の多機能性が膜系と細胞質系でのシグナル伝達系のクロストークの制御に重要な役割を果たしていることが解った。ミリストイル化は、リン酸化や糖鎖修飾に匹敵するくらいに重要な遺伝子産物の翻訳後修飾であることが示唆されたので、バイオインフォマティックスによりミリストイル化蛋白質の網羅的予測を行い、現在、各々の遺伝子産物のミリストイル化の機能の解析を開始している。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (2件)
J.Neurosci.Res. 81
ページ: 110-120
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