ノシセプチン/オーファニンFQ (N/OFQ)とノシスタチン(NST)は、同一前駆体タンパクから産生され、痛覚伝達において相反する作用を示す。ペプチドの産生、遊離が重要な制御機構の一つであると考えられる。Bioluminescence Resonance Energy Transfer (BRET)を用い、生細胞においてタンパクのプロセッシングを定量的にモニターできる新規プローブを開発し、NSTとN/OFQのプロセッシングに適用できることを明らかにした。本研究は、開発したプロセッシングモニタープローブを導入した細胞および神経回路網の解析が可能となる個体レベルにおいて、NSTとN/OFQの産生、遊離の動的な変化の追跡、それを制御する分子の同定、疼痛発症との連関の解析を行い、疼痛発症制御機構の解明を目的とする。 開発した系を用いNSTとN/OFQの産生には、少なくともfurin、PC1およびPC2が関与していることを明らかにした。内因性にfurinを発現している細胞に、PC1およびPC2を発現させると、N/OFQはデンスコア小胞に、NSTは、PC2発現細胞では、デンスコア小胞に、PC1発現細胞においては、未熟なデンスコア小胞に存在していた。NSTは、PC1発現により恒常的分泌経路を、PC2発現により調節的分泌経路を介して分泌された。また、炎症性の痛覚モデルマウスにおいて、脊髄後角においてfurinとPC2が顕著に上昇する興味深い結果が得られた。このことは、プロセッシング酵素の誘導により、NSTの産生や分泌経路が異なり、N/OFQの痛覚発症が制御されている可能性が示唆された。また、プロスタグランジンE_2によるアロディニアは、N/OFQの遊離を介しており、NSTによってその痛覚反応は抑制されたことより、NSTとN/OFQの遊離調節により、痛覚制御がなされていることも示唆された。
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