研究概要 |
グリア細胞はグルタミン酸による細胞外シスチンの取り込み抑制やL-buthionine-(S, R)-sulfoximine (BSO)によるグルタチオン(GSH)合成阻害による細胞内GSHの減少・枯渇によってアポトーシスが引き起こされることをこれまでに報告してきたが(1、2、4),アストログリアのモデル細胞として培養型C6ラットグリア細胞腫を用い,このGSHの枯渇下によるアポトーシスの過程で,今回は不飽和脂肪酸とくにアラキドン酸のアポトーシスに及ぼす影響を調べた。 C6細胞を10mMのグルタミン酸で処理すると,細胞内GSHの減少とともに過酸化脂質が蓄積した。この系に,50-100μMのアラキドン酸を添加すると12-リポオキシゲナーゼ酵素活性と細胞内の脂質過酸化は著しく増大した。それと共にカスパーゼ-3活性の低下,caspase-activated DNase (CAD)の細胞外流出、細胞内ATPの減少・枯渇,ミトコンドリア膜電位の低下が観察され,かつアポトーシスで観察されるラダー様DNA断片化は消失した。 DNAでは酸化反応による8-hydroxy-2-deoxyguanosine産生の増加が認められた。 以上のことから,C6グリア細胞腫はグルタミン酸もしくはBSOによってGSHが枯渇すると,細胞内活性酸素が増え,かつアラキドン酸からの12-リポオキシゲナーゼ代謝過酸化物を含む脂質のラジカル連鎖反応による過酸化が増大することで細胞膜強度が低下し,同時にアポトーシス関連酵素の失活もしくは減少を来たし,一方でDNAの酸化反応を引き起こしながらネクローシス様の細胞死を誘導増進することが示唆された。
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