研究概要 |
今回の研究は、慢性炎症疾患である関節リウマチ(RA)におけるMKの関与について検討した。 RA患者70例の膝関節液と130例の血清、変形性膝関節症(OA)患者18例の膝関節液中のMK値をELISA法にて測定した。RA患者の膝関節液中のMK値はOA患者に比べ85.4%が高値を示した。また、RA患者における血清MK値は健常者に比べて91.6%が高値を示した。関節液、血清中のMK値は,リウマチ因子と強い相関関係を示した。 また、抗II型コラーゲン抗体誘発性関節炎モデルを用い、MKノックアウトマウス(Mdk-/-)、野生型マウス(WT)における関節炎発症を調べたところ、WTではMdk-/-に比べて有意に関節炎の発症率が高かった。さらに、MKもしくはBSAを持続投与したMdk-/-について検討したところ、MK投与群は、BSA投与群に比べ関節炎の発症率が有意に高かった。関節炎モデルマウスにおけるマクロファージ、好中球の浸潤を免疫染色にて検討すると、WTではMdk-/-に比べて、いずれの炎症細胞の滑膜浸潤も増強を認めた。次にRA患者の手術検体から得た滑膜細胞、マウスの骨髄細胞から各々マクロファージを単離し、MKと破骨細胞分化因子(RANKL)を加えて培養し、破骨細胞の分化誘導についてM-CSFと比較検討した。RA患者、マウスいずれの細胞においても、MKとRANKLを加えると破骨細胞分化が誘導された。MKによる誘導の強さはM-CSFと同程度を示し、MK、M-CSFは相乗効果を認めた。 本研究の結果から、MKは、RAの病態形成において、炎症細胞の誘導、破骨細胞の分化誘導という2局面において深く関与していると考えられる。また、MKがRAのマーカーとしても有用であることが示唆された。 更に、MKを分子標的としたコラーゲン誘導関節炎の発症阻止を目指して、MKの発現を抑えるアンチセンスオリゴDNAを用いて研究した。その結果、有意差は得られなかったものの、MKアンチセンスオリゴDNAを投与したマウス群の方が、MKセンスオリゴDNAを投与したマウス群より関節炎が軽微であるとこが判明した。
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