硫酸化糖脂質は、脳神経のミエリン鞘、精子、腎臓遠位尿細管上皮細胞などに局在し、少なくともミエリン機能と精子形成には必須の分子であることが糖脂質硫酸転移酵素ノックアウトマウスの解析で明らかとなっている。糖脂質は、細胞膜上で単体として分散して存在するのではなく、接着分子や受容体やアダプター分子といった機能タンパク質分子と共に脂質ラフトとよばれるマイクロドメイン構造を形成し、細胞接着やシグナル伝達の足場を提供している。一方、ギランバレー症候群や多発性硬化症など脱髄疾患や精子不動症では、硫酸化糖脂質に対する血中抗体価が上昇することが知られ、これら疾患の病因・病態に硫酸化糖脂質に対する自己抗体が関与することが示唆されている。本研究では次の三つの具体的目標を目指す。1)硫酸化糖脂質を糖脂質硫酸転移酵素ノックアウトマウスに免疫して、硫酸化糖脂質に対する単クローン抗体、とくに糖鎖部分や脂質部分の細部構造を識別する単クローン抗体を作製する。2)硫酸化糖脂質を含む精子形成細胞由来の脂質ラフト画分を野生型マウスに免疫して、脂質ラフト上で硫酸化糖脂質が形成する分子複合体を認識する単クローン抗体を作製する。3)硫酸化糖脂質に対する自己免疫モデルマウスを作製する。このうち、今年度は計画1)と2)を実施し、単クローン抗体を作製した。現在、抗体エピトープの詳細な解析と抗体遺伝子の構造解析を進行中である。計画3)にも着手しており、ほぼ予定どおり当初計画が進行している。
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