1)硫酸化糖脂質に対する単クローン抗体の作製:スルファチドを、糖脂質硫酸転移酵素ノックアウトマウスに免疫し、DI8とよぶ単クローン抗体(IgG3)を得た。DI8抗体は、スルファチドともセミノリピドとも同程度に反応したが、中性糖脂質やガングリオシド、他の硫酸化糖鎖とは結合しなかった。硫酸基が内部のガラクトースに付加したSM2とは反応しなかったので、末端ガラクトース3-硫酸構造を認識すると思われる。DI8ハイブリドーマからH鎖とL鎖の可変部をコードする遺伝子を得、単鎖抗体scFvをファージディスプレイシステムで発現させ、最終的に、可溶性scFv抗体が元の抗体の特異性を保持することを示した。 2)脂質ラフト上で硫酸化糖脂質が形成する分子複合体を認識する単クローン抗体の作製:セミノリピドは、マウス男性生殖細胞の界面活性剤不溶性浮遊画分(DIM)に回収され、脂質ラフト分画に局在すると思われた。そこで、DIMを同系のマウスに免疫し、単クローン抗体を作製した。DIMと強く反応するが、セミノリピドとの反応性が比較的弱いものを選択した。このスクリーニングにより3種類の候補クローンを選択した。これら3種類のクローンが産生する抗体はいずれもIgMであった。3種類の抗体のうち、2種類はウェスタンブロッティングで特定のタンパク質と反応したが、残りの1種類はどのバンドとも反応しなかったことから、この抗体(#1)は分子の立体構造を認識することが想像された。#1抗体が認識する分子(複合体)はスルファチドには結合するが、ガラクトシルセラミドには結合しないことがわかった。現在、#1抗体が認識する分子(複合体)の単離を進めている。 3)硫酸化糖脂質に対する自己免疫モデルマウスの作製:1)と同様に、スルファチドを糖脂質硫酸転移酵素ノックアウトマウスに免疫し、血中の抗体価が十分上昇していることを確認した後、脾臓細胞を調製した。この脾臓細胞を同型の野生型マウスに移植したが、レシピエントマウスの血中で硫酸化糖脂質に対する抗体価が上昇せず、症状も出なかった。
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