研究概要 |
1.ヒ素耐性ヒトがんKAS細胞での遺伝子の発現を調べ親株KB=3-1細胞と比較したところ。ABCトランスポータースーパーファミリーのメンバーであるABCB6の発現が亢進していた。ABCB6cDNHをKB-3-1細胞にトランスフェクトしてABCB6を発現している細胞、KB-B6を作製した。KB-B6はヒ素、シスプラチンに耐性であった。KB-B6細胞へのシスプラチンの蓄積は親株に比べ低下していた。KB-B6細胞より単離したミトコンドリアへのシスプラチンの蓄積を調べると、KB-3-1細胞から単離したミトコンドリアに比べ蓄積が有意に低下していた。PtのDNA adductを比べると、KB-B6細胞でゲノムDNA、ミトコンドリアDNA両方のDNA adductの減少がみられた。これらの結果はKB-B6細胞ではABCB6が細胞膜でも発現してシスプラチンを細胞外に排出していることを示唆しており、現在ABCB6の細胞内局在部位を調べている。 2.ヒ素を輸送することで知られているABCトランスポーター、MRR1について輸送機構を解析した。 MRP1のヌクレオチド結合領域に存在するSignature sequenceに変異(G771D,G1433D)を導入することによりこの保存された配列の機能を調べた。MRP1のSignature sequenceがATPの加水分解に関与しMRP1の輸送能に重要であることが確認された。 MRP1によるビンクリスチンなどの抗癌剤の輸送にはGSHが必要であることが知られている。しかしながらGSHがMRP1にどのような作用をするかよく判っていない。Dual expression vectorを用いてMRP1のN末側、C末側を同時に昆虫細胞に発現させ、トリプシンによる限定加水分解を行うことによりGSHの作用を調べた。GSHはMRP1がその輸送基質と結合する部位の立体構造を変化させて、基質とMRP1の結合部位を促進するように働くことを示唆する結果を得た。
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