1)ARFのp53非依存性癌抑制活性分子機能の検討:BCL-6を介する経路 ARFに結合する蛋白質を検索し、BCL6がそのひとつであることを突き止めた。その後、ARFはBCL6のC末DNA結合領域に結合し、その転写抑制活性を低下させることによって、BCL6の機能を抑制するという機序を明らかにした。また、ARFの機能領域のうち、N末37残基にBCL6と相互作用する中心領域が存在することを見出した。他研究者により、BCL6はBリンパ球の腫瘍発生に関わる癌遺伝子であること、他の細胞の老化を抑制することが既に報告されている。本研究により、ARFのp53を介さない癌抑制機能の一部はBCL6の機能を抑制することにより達成されていることが初めて示された。 2)ik3-1/ik3-2によるp53非依存性アポトーシス分子機構の解明:CRを介する経路 ik3-1結合蛋白質として、クローニングしたCR遺伝子の機能を検討した。CRは培養細胞株に高発現させると著明なS期停止を引き起こす。さらにS期停止の分子機構を検討した結果、CR発現は内在性Cdc7の蛋白質量を著明に低下させることを明らかにした。CRによるCdc7蛋白質量低下の機序として、Cdc7mRNAの低下すなわちCdc7転写レベルの低下がその原因であることを突き止めた。CR自身はDNA結合活性を持っていないが、ヒストンデアセチラーゼI遺伝子やmSin3Aなどの転写抑制共役因子とも内在性レベルで結合していることから、CRは種々の転写抑制因子と機能的に連関することが示唆された。まだ、ik3-1/ik3-2がいかにCRの機能を制御しているかの詳細検討は今後の課題事項であるが、以上の研究により、ik3-1/ik3-2がCRを介して癌抑制作用をもつことが示唆された。
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