研究概要 |
Yeast two-hybrid systemの結果と哺乳類細胞を用いた実験から、HIF-1αにヒストンジアセチレース7(HDAC7)が特異的に結合することを明らかにした(平成15年度報告)。本年度は、低酸素下から常酸素下への移行(re-oxygenation)の際のHIF-1αの分解とHDAC7との関係について調べた。HDAC7-wild type(WT)とHIF-1α-WTを293細胞に発現させ,細胞染色を行った、その結果、HDAC7は常酸素下で主に細胞質に発現していたが、低酸素下で核内に移行し、re-oxygenationに際には30分で細胞質への移行が見えはじめ60minで細胞質に移行した。一方、HIF-1αは、低酸素下で安定化がおこり、re-oxygenation30分より分解をうけ、60分で完全に分解されていた。このことから、re-oxygenationの際のHDAC7の核外移行とHIF-1αとの分解に関連性があることが推測された。更に、HDAC7にある核外移行シクナルNESの変異体を作製し、HIF-1α□WTを共発現させ両者の局在を調べてみたところ、HDAC7のNES変異体は酸素濃度に関わらず、核内に発現していた。HIF-1αは、re-oxygenationの際にも分解されず核内に留まっていた。このことから、re-oxygenationの際、HDAC7によりHIF-1αの分解が制御されていることが考えられた。次に、402、564番目のプロリン残基の水酸化がHIF-1α分解のトリッガーになることが知られているので、これらのプロリンをアラニンに換え、常酸素下でも安定なHIF-1α変異体P402AP564Aを作製した。この変異体とHDAC7-WTをともに発現させると、re-oxygenationの際にHDAC7は核から細胞質へ移行するが、HIF-1α変異体P402AP564Aは核内に留まっていた。HIF-1αとHDAC両WTを共発現させ、プロテアソームのインヒビターMG132を加えても同様の結果が得られた。以上の結果から、re-oxygenationの際に、HIF-1αはHDAC7と乖離し、HDAC7核外に移行し,不安定となったHIF-1αが核内の分解系、ユビキチン-プロテアソーム系により分解を受けることが示唆された
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