研究概要 |
HIF-1αのinhibitory domain(イD)をbaitとして用いた、Yeast two-hybrid systemにより得られたHIF-1α結合タンパク質であるヒストン脱アセチル化酵素7(HDAC7)とHIF-1αの相互作用について詳細に検討した。HIF-1α上のHDAC7結合部位ならびにHDAC7上のHIF-1α結合部位を、HIF-1αおよびHDAC7の各々のフラグメントをつくり、Mappingをyeast two-hybrid systemを用いて行なった。その結果、HIF-1α上のIDのC末側がHDAC7結合のminimal domainとして、また、HDAC7のC末端がHIF-1α結合部位として同定できた。また、更に、ヒト胎児腎由来のHEK293細胞をもちいて、HIF-αファミリーメンバー(HIF-1α,2α,3α)とClass II HDACファミリーメンバー(HDAC4,5,7)の結合について免疫沈降法により調べたところHIF-1αとHDAC7の結合は特異的であることが明らかになった。HIF-1αとHDAC4,5,7の細胞内の局在を常酸素下、低酸素下で調べてみたところ、HDAC7は常酸素下では主に細胞質に局在しているが、低酸素下ではHIF-1αと共に核に移行していた。一方、他のClass II HDACファミリーメンバーである、HDAC4とHDAC5は酸素濃度の変化により局在は変わらなかった。更に、核移行シグナル(NLS)を欠損させた変異体を用いた研究から、低酸素下ではHIF-1αがHDAC7を引き連れて核に移行していることが分かった。また、HIF-1αの転写に重要なコファクターp300とHIF-1αとの結合に対してHDAC7は阻害作用を及ぼさず、p300、HIF-1α、HDAC7は3量体を形成していることが明らかとなった。また、最近、低酸素下から常酸素下への移行(re-oxygenation)の際にもHDAC7がHIF-1αの分解を制御していることがわかった。以上の結果からHDAC7はHIF-laの重要な機能調節タンパクであることが新たにわかった。
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