研究概要 |
哺乳類X染色体の不活性X染色体化の開始に伴って、X染色体上のヒストンがメチル化されることが最近明らかにされたが、その遺伝子抑制に関わる意義については明らかになっていない。そこで、不活性X染色体化に伴いメチル化するとされているH3の9、27番目、及び、H4の20番目のリシン残基(K9-H3,K27-H3,K20-H4)をアルギニンなどメチル化されない残基へと改変したヒストンをマウス胚性腫瘍(EC)細胞MC12株で過剰発現して不活性X染色体の再活性化頻度への影響を調べた。未分化なMC12細胞では再活性化の頻度が体細胞に比べて100倍ほど上昇しているが、K9-H3を改変したヒストン(K9R, K9A)の発現によって、更に、10倍から100倍程度の再活性化頻度の上昇が認められた。ただしこの再活性化頻度は得られたクローンによって著しく変動しており、頻度を算出する際に必要な細胞の生残率も極めて低い(1/100〜1/1000)ことなどから、更なる検討が必要と思われる。K27-H3,K20-H4については、現在、解析を進めている。 EC細胞は株によって全く異なった性質を示す雑多な細胞種を包括したカテゴリーといえる。EC細胞にマウス体細胞を細胞融合すると体細胞由来の不活性X染色体が再活性化する株としない株があることが知られていた。再活性化能の有無の違いを明らかにするために、種々のEC細胞を用いて未分化細胞特異的発現をする遺伝子の発現プロファイルを網羅的に解析した。これまでに5つの未分化細胞特異的遺伝子が再活性化能の有無と連関した発現を示すことを明らかにした。これらについては発現ベクターを構築して再活性化能を持たない細胞に導入してその効果を解析している。
|