研究概要 |
平成17年度は、昨年の反省をもとに、検体収集に全力を挙げた。 (1)神奈川こども医療センター小児外科から16孤発例に加え、慶応大学病院小児外科から20孤発例検体の計36例の検体を収集した。 (2)昨年度は、3世代にわたる家族例を収集し、この家系でのRET遺伝子の変化を、exon5のアスラパギン酸がヒスチジンに変化するミスセンス変異(D300H)と同定した。この家系では、3世代目に2家族4人の患者がいるが、2家族のお母様が従兄弟の関係にある。症状のないお母様もこの変化を有しており、主効果遺伝子とされるRETの変化だけでなく、その他の因子を推定させる例であった。そのシグナル伝達に関与するGDNF, SOX10,エンドセリンB受容体とそのリガンドであるエンドセリン3のハプロタイプ解析を行ったが、患児らに共通するハプロタイプのは存在しなかった。 (3)平成15年度にハプロタイプ構築に必要なSNP抽出を終了したGDNF, SOX10,エンドセリンB受容体とそのリガンドであるエンドセリン3について、収集したケースでの相関解析をおこなっているが、現在のところ有意なハプロタイプを検出できていない。 以上から、多因子遺伝性疾患の解析候補としてヒルシュスプルング病を取り上げたが、候補遺伝子のハプロタイプを用いた関連解析では、結果を見出すことができなかった。そのことは、症例数の問題なのか、方法論の問題なのかを検討する必要がある。ただ、現状ではこれ以上の検体の収集は不能であり、方法論の仮説に誤りがあったとしても矛盾しない結果と考える。
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