ヒト染色体15q11-q13に相補的なマウスのインプリンティングドメインの調節領域の機序解明をおこなってきた。当初の予定では、この調節中枢は何らかの転写因子やインスレーターの結合によりドメイン全体を調節するものと思われ、この転写因子の単離、その結合領域の欠失を作製し、機能解析を試みようとした。しかし、この調節領域を解析していくと、そのような単純な機序で作用するのではないことが明らかになり、より詳細な解析をおこなった。 具体的には、この調節領域のヒト、マウスの塩基配列の相同性から、3種類以上の5箇所の転写因子結合領域を見つけた。そのうちのひとつはCTCF結合領域と同様の塩基配列をもち、In vitroのゲルシフトアッセイでも陽性バンドが認められた。したがって、ヒト染色体11番に位置するH19遺伝子上流付近に存在するインプリンティング調節領域のCTCFのインスレーター作用と同様な機序が示唆された。その後、このCTCF結合領域をレーポーターアッセイで、インスレーター活性を解析したところ、インスレートする機能は認められなかった。また、この結合領域は、調節領域のすぐ下流に位置するSnurf-Snrpn遺伝子の転写をエンハンスすることが認められた。他の2つの転写因子もレポーターアッセイで、遺伝子発現にエンハンスに働くことがわかった。これらの転写因子がインプリンティングドメインの調節因子としていると思われる。 これらのことはglobin領域のLCR(locus control region)の機能と相似している。 また、今後さらにマウスtransgeneによる解析を行うためのコンストラクトを作製し、解析を行っている。 また、さまざまなインプリンティング遺伝子の解析もおこなった。
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