眼瞼下垂患者10症例のDNAを収集して、変異解析を行った(位置的異質性があり家族性眼瞼下垂は均一な疾患群ではない)。ヒトの候補遺伝子としてDMBX1を選び遺伝子変異解析を行った。DMBX1を選んだ理由は、以前他のグループから連鎖解析により特定された遺伝子座領域に存在すること、外眼筋麻痺の原因遺伝子とホモロジーがあったことによる。1家族例に1160G>A(R382Q)変異を見いだしたが、眼瞼下垂を発症していない兄弟にもみられ、この変異が、眼瞼下垂の原因となっている可能性は低いと考えられた。DMBX1遺伝子は、機能不明なOARドメインを含むホメオボックス遺伝子であった。OARドメインの機能を明らかにすべく、Tagを付けたDMBX1遺伝子全長をHela細胞、NIH3T3細胞に導入し、DMBX1を相互作用するタンパク質の単離とDMBX1タンパク質が転写を制御する遺伝子を特定しようと試みているが、未だに成功には至っていない。 次に、10症例のうち、家族性で遺伝子解析の協力がえられる長崎の家系の連鎖解析を行い、疾患遺伝子座の同定を行うこととした。以前報告されている染色体1番の連鎖は、否定的であり、他の新しい領域に遺伝子座がマップされる可能性が高い、現在、全ゲノムを対象として連鎖解析を行っており、10番染色体まで終了している。染色体7番において最大Lod値=2.1を示すマーカーを見いだしている。今後は、全ゲノムの解析終了後に、連鎖の可能性が高い領域を選び、ハプロタイプ解析を行い連鎖領域を決定し、その領域から候補遺伝子の変異解析を順次行って、先天性眼瞼下垂の原因遺伝子の特定を行う。
|