平成16年度 1)発現実験によるミスセンス変異の確認:以前の研究で、先天性無痛無汗症(CIPA)患者に検出されたミスセンス変異について解析した。正常TRKA cDNA発現プラスミド(pCAGGS)を鋳型に、in vitro突然変異誘発法によりミスセンス変異を導入した。これらを、TRKAを発現していない神経細胞株にトランスフェクションし、NGFに対する応答を自己リン酸化されたチロシン残基を検出することにより調べた。TRKAタンパクの細胞外ドメインに位置するミスセンス変異では、プロセッシングの異常がおこり、自己リン酸化反応も低下していた。一方、細胞内チロシンキナーゼドメインの変異では、プロセッシングは正常に起こるが、自己リン酸化反応が著しく低下していることを明らかにした。 2)CIPAとピルビン酸キナーゼ(PK)欠損症を合併した症例の解析:CIPAとPK欠損症の責任遺伝子TRKAとPKLRは、ともに1番染色体長腕の近接した領域(1q21-q22)に位置する。両疾患はいずれも常染色体劣性遺伝形式をとるが、これらを合併した米国(シカゴ)からの症例について解析することにより、それぞれの遺伝子に独立に点変異が起こっていることを明らかにした。 3)1番染色体の片親性ダイソミーの証明:クウェートの患者と親について、TRKA遺伝子が位置する1番染色体および2番から22番染色体に約10cM間隔で設定されているマイクロサテライトマーカーを用いて、allelotypeを解析した。この患者は、TRKA変異遺伝子についてホモ接合体であり、父性片親性ダイソミーにより発症していることを明らかにした。
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